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Computation and Quantum Chemistry/計算と量子化学

Computation and Quantum Chemistry/計算と量子化学

Dartmouth大学のJames Whitfield助教授が量子化学の概念や、解決することのできる問題について解説してくださいます。以下の文章では、これらの問題が現代社会においてなぜ問題なのかということについて解説していきます。先にビデオを見ても、この文章を読んでくださっても構いません。

20世紀に起きた緑の革命によって、世界の食糧生産率は格段に上昇しました。多くの国における飢餓の原因は、十分な食べ物が生産できないことではなく、むしろ経済的格差や貧困、ガバナンスの弱体化に起因しています。この世界的な食糧自給を支えている一つの大きな要因が、空気中の窒素を固定し植物が取り込みやすい形にした、合成肥料の存在です。この手法はハーバー・ボッシュ法として知られ、人類が生産する全エネルギーの約1~2パーセントをも利用しています。この手法に代わる、より省エネルギーで実現可能な手法を見つけることは、人類にとって非常に大きな利益となるのです。

化学者たちは、分子の構造やそれにかかるエネルギーの大きさなど様々な分野に関して研究を行なっています。これらの情報から彼らは、異なる状態下において分子がどのような形状をとるのか、より大きな構造を持った時にどのような形となるかなど、化学反応がどのようにして起こっているかや、特定の反応でエネルギーが放出されているのか、吸収されているのかということを理解する上で重要な現象について推測を行なっています。

これらの計算ができることによって、肥料などがより効率的に生産されうる可能性があり、量子コンピュータはこの計算に一役買うのではないかと考えられています。またそのような過程の中で、植物の光合成の詳しい仕組みの理解や、強度、柔軟性などに優れた新たな材料の開発に繋がっていく可能性もあります。

それらの計算は、量子化学として知られ、量子コンピュータを用いることでより発展しうる分野であると考えられています。量子コンピュータを理解する上で重要である、量子力学の重要な概念について議論を行う時に見ていきますが、分子などのように、正確に量子系を記述しようとした場合、関与している電子や原子の数に応じて、指数関数的に計算が複雑になっていきます。これは古典コンピュータにとっては莫大な計算量となってしまいます。

幸運にも、私たちが分析したい状態が指数関数的に増えてしまうこの問題には、ある解決策があります。それは量子コンピュータを用いることです。多くの場合、私たちが求めたいのは、平均のエネルギーや、全ての可能な振動が同時に起こった場合などの可能性のある状態を集計したものや、最も低いエネルギー状態などの特定の状態などです。

この分野での計算の難しさは、どこまでの精度を答えに求めるかに依存しています。すでに議論したような素因数分解のような問題であれば、必ず特定の解が存在しています。しかし、多くの計算は、現実世界においてどのようなことが起こるか推測するために行われており、非常に複雑な値であったり、理想的なモデルとは必ずしも一致しません。従って、ある程度十分な値が出てきた段階で、計算を止めるべきポイントを見極める必要があるのです。

そのような疑問はさておき、量子化学は量子コンピュータにおける問題の基準を理想的に満たしているのです。全てのデータを用意したり、読み書きにかかるメモリーが小さく、分子の大きさが大きくなるにつれ、可能性のある答えは指数関数的に増大していくからです。

実際、量子化学は、ノーベル賞受賞者であるCaltech(カリフォルニア工科大学)のRichard Feynman氏によって、1980年代初頭に現在の量子コンピュータのようなものが提唱された時に、同時に提唱された量子コンピュータへの応用が可能な学問分野です。比較的に扱いやすい点と、人類への利益の大きさから、現在では最も期待される量子コンピュータへの応用分野の一つとされています。

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量子コンピュータ入門

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