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外題の位置について

外題の位置について

日本の書物の特徴は、題名の記し方にもあります。まず、以下のテキストを読んだ後、佐々木教授がビデオで紹介する例をご覧ください。

外題と内題

早くから出版が普及した中国や朝鮮半島では、本文の直前に題名があるのが普通です。表紙にある題名を「外題(げだい)」と言うのに対し、表紙の内側にあるということで、こちらは「内題(ないだい)」と呼びます。実は日本の書物には内題がないものが多いのです。そういうものは外題で作品を判断せざるをえないのですが、先に説明したように表紙が付け替えられているものが多いのです。この為に作品名を明らかにできずに、仮の名を付けている作品も少なくありません。また本文を読んで作品名を判断することもしばしばなのです。

同一の内容に様々な題名

歌集類に内題を有するものが多く、創作的な物語にこれがないものが多いという傾向は、巻子装になるかどうかと併せて考えると、物語は社会的な地位の低さ故に題名が書かれなかったと思われるのです。それどころか、同一作品に全く異なる複数の題名があることが珍しくないことからすると、そもそも正式な題名がない作品が多かったらしいのです。歌物語『伊勢物語』には「在五中将日記」という異名がありますし、日本最初の物語である『竹取物語』にも「竹取翁物語」という名があります。『源氏物語』はそもそも表紙には「きりつほ」・「はゝきゝ」などと各巻の名前しか書かないのが普通であり、珍しく外題があるものにも「光源氏物語」とあったりします。作品の受容圏が狭く、改まった題名が必要なかったとも考えられるものの、やはり作品としての地位の低さも関連しているものと思われるのです。

外題の位置と内容の関係

外題においても和歌と物語には書き方に違いがあります。和歌(図1. 『金葉和歌集』)は表紙の左肩に、物語(図2.『浜松中納言物語』)は中央に書くというしきたりがあったのです。

2 different types of possition of the title 左:図1. 『金葉和歌集』
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右:図2. 『浜松中納言物語』
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これは書を専門とする世尊寺家の鎌倉時代後期の人である行房(ゆきふさ、?~1337)の書道の教えを記した『右筆条々』(図3)にも、書かれていることです。

図3. 右筆条々
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ジャンルと書物の仕立て方に関連性があったことが良く判るのですが、この位置の違いは何に由来するのでしょうか。それは巻子装の外題の位置を確認してみると明らかになります。

巻子装を拡げて、表紙の側を見てみると、表紙の左方に外題があるのが確認できます(図4. 『大般若波羅蜜多経』)。表紙の真ん中では巻いた時に題名が見えなくなる可能性があり、巻子装の外題はこの位置以外には付けようがないのです。このことからすれば、冊子本でも外題が左肩にあるのは、巻子装に近いというか、巻子装で仕立てることが可能である作品であることを示し、中央のものは巻子装にはならずあくまでも冊子であることを示していると言えるでしょう。

scroll 図4. 大般若波羅蜜多経
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ただし、この作法は古い時代には比較的よく守られていますが、17世紀以降の商品としての版本では、時代が下るほど守られなくなることは理解しておくことが必要です。

ビデオで紹介された書籍

1. 源氏物語・藤袴 2. 源氏物語:花摘む里 3. 金葉和歌集
4. 敦忠集 5. 近代秀歌 6. 右筆条々
7. 大般若波羅蜜多経 8. 浜松中納言物語 9. 浜松中納言物語
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古書から読み解く日本の文化: 和本の世界

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