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絵入り冊子本の登場

絵入り冊子本の登場

16世紀ごろから、冊子本に挿絵が入れられるようになってきました。全ての絵入り本は「袋綴」で作られていました。まず以下のテキストを読み、佐々木教授が例を示して説明しているビデオをご覧ください。

先にも触れたように、日本では絵は巻子装に保存することが慣例として強く意識されたようで、難しいことではないはずなのに、冊子本に挿絵が入れられることは長らく行われませんでした。そのためもあり絵巻が多く作製されたのです。ただし、先に注意した様に、中国の版本を写すなどした図を有する冊子本の写本は、鎌倉時代以降の例が確認されています。冊子本に挿絵が存在している古い例は、鎌倉時代の13世紀に作られた『源氏物語』の粘葉装写本が確認できるにすぎません。

ところが室町後期の16世紀になると、俄に冊子本の絵入り本が製作されるようになってきます。注目すべきはその装訂で、この時期の絵入り冊子本はみな袋綴なのです。またその大きさに注意すると、大きなものと、高さがその半分のものとがあることに気付かされます。半分の高さのものは横幅の方が長いので「横本(よこほん)」と呼ばれます。

慶應義塾大学所蔵の大型の例を確認してみると、まず16世紀のものとして、『扇合物かたり〈花鳥風月〉』(図1)があります。大きさは 27.4×21.7cmとやや小振りのものです。16世紀末から17世紀初め頃のものである、『四十二乃物諍』(図2)は、大きさは31.9×25.0cm とかなり大型です。

illustrated books 図1.『扇合物かたり(花鳥風月)』
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illustrated books 図2.『四十二乃物諍』
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一方横本の例をみると、17世紀初めの『毘沙門の本地』(図3)は、大きさが16.5×24.6cmです。近い時期の『祇王』(図4)は、やや大振りで 18.5×25.6cmもあります。

illustrated books 図3. 『毘沙門の本地』
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illustrated books 図4.『祇王』
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この袋綴本の2つの高さに注目すると、先に確認したように絵巻にも2つの高さがあることと共通していることに気付かされます。このことの理由を考えると、絵巻物を作るための料紙を半分に折って、絵入り袋綴本を作製したらしいことが判るのです。巻子装と袋綴は基本的に紙の片面しか使用しない装訂であり、その点で料紙を流用することも簡単であったと思われるのです。

少数ではありますが、この2つの大きさ以外の絵入り袋綴本も存在しています。これは『常盤の姥』(図5)ですが、19.3×21.5cmとやや桝型に近い特殊な大きさをしています。続いて、『磯崎』(図6)は、25.8×34.0cmもあり、大型の絵入り冊子本を横にしたような大きさなのです。

Illustrated Books 図5. 『常盤の姥』
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Illustrated Books 図 6. 『磯崎』
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ビデオで紹介した書籍

1. 竹取物語 2. 大型絵入本挿絵断簡二種その一 3. 大型絵入本挿絵断簡二種その二
4. 中しやう姫 5. ふんしやう 6. 花鳥風月
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古書から読み解く日本の文化: 和本の世界

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