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奈良絵本の流行

奈良絵本の流行

「奈良絵本」とは、室町後期から江戸前期にかけて製作された絵入写本の総称です。このステップでは、奈良絵本に用いられている装訂、サイズ、紙などについて見ていきましょう。

まず、テキストを読んだ後に、佐々木教授のビデオで実際の例を見てみましょう。

「奈良絵本」とは、室町後期から江戸前期にかけて製作された絵入写本の総称です。言葉の由来については諸説ありますが、明治時代以降の呼称であり、奈良との関係ははっきりせず、基本的に京都で作製されたものと考えられています。物語性のあるものだけでなく、和歌とそれを読んだ歌人の姿を描く「歌仙絵(かせんえ)」に属するものや、和歌の内容を絵にしたものなど、ストーリー性のないものも存在しています。これまでに見てきた絵入り冊子本も奈良絵本と称することのできるものですが、ここでは物語性のない例を上げておきたいと思います。

この『小倉山百人一首』(図1)は、有名な和歌のアンソロジーである『百人一首』に作者の肖像を加えたものです。

Ogura hyakunin isshu 図1. 小倉山百人一首
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またこちらの『扇の草紙』(図2)は、和歌の内容を絵画化したものを扇の形の中に描き、傍にその和歌を書き添えたものです。実際にこのような扇も作られたりもしたようですが、和歌の内容をどの様に絵画化しているのかを楽しんだものと思われます。

Ōgi no sōshi 図2. 扇の草紙
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奈良絵本という詞には、冊子本だけを対象とするという考え方と、巻子装をも含めるという考え方がありますが、製作の場は共通していると考えられるので、この時期の絵入巻子装本を特に「奈良絵巻(ならえまき)」と呼ぶことが広まってきているようです。

この本『しゆてんとうし』(図3)は、冊子の奈良絵本が盛んに製作されていた時代の奈良絵巻の例です。冊子との差別化をはかったのか高級な仕上げとなっています。

Shuten tōshi 図3. しゆてんとうし
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袋綴の横本は奈良絵本の最も流布した形態と言えるものですが、17世紀後半になると高級な斐紙の代用として用いられた、石や粘土の粉を混ぜ込んで漉かれた「間似合紙(まにあいがみ)」を用いたものが目立つようになります。「間似合い」という詞は代用を意味しています。この紙を用いたものは挿絵もやや単純で、色数も比較的少ないものが多く、廉価版として製作されたことが理解できます。この本『橋姫』(図4)は、間似合紙を用いた典型的な例です。

Hashihime 図4. 橋姫
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また間似合紙を使った奈良絵本は、「針見当(はりけんとう)」と呼ばれる、行を揃える為に、行毎の文字の書き出しと終筆の位置に針で穴を開けた目印がついていることが多くあります。この目印は、一行とばしであったり、書き出し位置にしかなかったりと、幾種類かあるようですが、何れも行を揃えるために加えられたものです。いつから始まったのか不明ですが、少なくとも室町末頃の間似合紙ではなく、挿絵もない写本にも存在していることが確認できています。

ビデオで紹介された書籍

1. ふんしやう 2. ふんしやう 3. 中しやう姫 4. 竹取物語
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古書から読み解く日本の文化: 和本の世界

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