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第3週へようこそ

第3週へようこそ

第3週では、14世紀から19世紀にかけての漢籍の受容と、そこから生み出された研究や創作活動について考えていきます。まずは、慶應義塾大学斯道文庫から、この週を担当する堀川教授の週の概要をご覧ください。

The PDF version of the course handout for Week 3 is available in the DOWNLOADS section below.

Some words and names that may be unfamiliar to learners are listed in the glossary for each week. For Week 3, it’s located in the last step of this week. The PDF version is also available.

塔頭の学問と文化―建仁寺両足院を例として―

建仁寺

京都五山のひとつ、建仁寺は、京都における最も古い禅宗寺院です。建仁2年(1202)、鎌倉幕府第2代将軍源頼家の支援により、栄西が開きました。

相国寺が幕府と深く結びついて、政治の面でも大きな役割を果たしていたのに対し、建仁寺は文学活動が盛んで、優れた詩人や学者を多く出しています。京都ではいつ頃からか、禅宗寺院の特徴を「○○づら」(づら=つら、顔の意)という言い方で表します。相国寺は「声明づら」と呼ばれます。声明とは、儀式の時に禅僧たちが歌う歌のことです。将軍家の菩提寺として、葬式や法事を頻繁に行う、という特徴を見事に捉えています。それに対して建仁寺はずばり「学問づら」。勉強ばかりしている、という、これも少し皮肉めいた呼び方です。

両足院

「学問づら」の建仁寺のなかでも特に重要な塔頭が、14世紀から現在に至るまで、書物を中心に貴重な文化財を伝えている両足院です。

龍山徳見(1284-1358)は、現在の千葉県の武士千葉氏の出身で、鎌倉五山で修行した後中国に渡り、45年間も滞在、その間に中国の禅宗寺院の住持も務めました。帰国後は建仁寺・南禅寺・天龍寺の住持を歴任しましたが、建仁寺では義堂周信・絶海中津という、五山文学を代表する二人の僧に学問的な指導を行っていて、建仁寺の学問的伝統の出発点となっています。最後は建仁寺において亡くなりました。

彼の死後、二人の弟子が建仁寺の住持を務め、引退後それぞれ塔頭を開きました。一庵一麟の開いた霊源院と、無等以倫の開いた知足院です。いずれも形式上龍山徳見を初代としています。

霊源院には、龍山と同じ千葉氏の一族である、美濃(現在の岐阜県)の東氏の子弟が多く入っています。建仁寺の学問や文学において最も重要な人物のひとり、江西龍派や、15世紀半ばに中国に使節として派遣された九淵龍琛、少年時代の一休宗純の学問の師匠である慕哲龍攀などがここで活躍しました。

一方、知足院には、龍山が帰国の時、中国から連れてきた林浄因の子孫が多く入っています。この家は奈良で饅頭屋を営み、その子孫が現在も和菓子の老舗、塩瀬総本家として続いています。無等の弟子である文林寿郁も林氏出身で、彼は建仁寺住持引退後、知足院から分かれて新たな塔頭を開きました。これが両足院です。

天文21年(1552)、建仁寺のほとんどが火事で焼けると、知足院は両足院に吸収合併されます。また、霊源院も経済的に苦しくなり、両足院の管理下に置かれます。こうして、両足院は、二つの塔頭の学問や文学を継承し、建仁寺における最も重要な塔頭となりました。

蔵書調査で感じること

慶應義塾大学の附属研究所である斯道文庫からは、研究者が毎年定期的に両足院の蔵書の調査に伺っています 。調査のときにいつも感じるのは、歴代の住持たちが、常に蔵書を充実させていく努力を惜しまなかったということです。16世紀から19世紀にかけて、その時々の住持が入手したり写したりした書物が積み重なって現在の両足院の蔵書が形成されたのだということを、調査に行くたびに実感します。

たとえば、蔵書の中には、塔頭の中で漢詩の会が開かれ、住持と修行僧たちが一緒に詠んだ作品が記録されているものもあります。また、さまざまな書物から特定のテーマに関する記事を抜き書きした写本、いわばデータベースのような書物も伝わっていて、当時の勉強の様子が偲ばれます。そういう書物の場合、最初に作った住持から次の住持へと書物が引き継がれていく過程で内容の増補が行われます。中には、三代にわたって増補されているものもあります。筆跡から、これは誰が書いたものだろう、と推定するのも、その書物の成立年代や成立事情を知る上で重要なことです。

Keywords introduced in this step

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古書から読み解く日本の文化: 漢籍の受容

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