コレクションとコレクション・マネジメント

コレクションとは？

一般的には、集めるという行為によって蓄積された種々のモノの集合体を意味しています。一方で、コレクションを活動の根幹とするミュージアムの領域では、長年コレクションに関する議論が行われ、より意味を絞り込んだ定義づけが行われています。国際博物館会議（ICOM）の中にはコレクション活動に関する国際委員会（COMCOL: International Committee for Collecting）が存在します。ICOMが刊行した最新のミュゼオロジー事典（Dictionary of Museology）では、以下のような定義が示されています。

コレクションは、個人や組織がなんらかの共通する特徴にのっとって収集した、有形物・無形物の集合体。分類され、選択され、元々のモノが持っていた用途の回路の外側にあって保存され、時に観者に対して提示されるもの。
──Mairesse, François. 2023. Dictionary of Museology. Routledge.

この定義からは、ミュージアムで、広義のコレクション（「集められたもの」）と、ミュージアムのコレクションとの間にどのような線引きがなされているのかを理解することができます。

ミュージアムのコレクション

まず、モノを収集する段階では、個人や組織といった収集の主体があり、特定の意図や基準に基づいて収集が行われるあり方、つまり、制度化された収集が想定されています。収集の意図や基準は、ミュージアムの専門領域や成り立ちなどによって異なりますが、大きな枠組みとしては、「事例として、参考資料として、または美的あるいは教育的な重要性を持つ資料としての潜在的価値を認めたもの」（Burcaw, G. Ellis. 1997. Introduction to Museum Work. Altamira Press.）が収集されます。

収集されたモノに対して、分類とドキュメンテーション（記述の作成）が行われることは、ミュージアムのコレクションの重要な特徴です。モノを集めるだけではなく、それを研究・調査して、ある体系の中に位置づけること、そしてその成果を社会に共有することは、ミュージアムの根幹的な仕事です。

ミュージアムのコレクションは、ときに修復などの手立てを用いながら、長期的に保存されます。ミュージアムのコレクションに入るモノは、日常的な環境から切り離され、異なるライフサイクルを生きることになります。

収集されたモノは、さまざまな対象や方法で提示されます。展覧会の会場で、対象を限らず沢山の人々に対して提示される場合もあれば、「スタディ・コレクション」として、研究・調査や教育のために、限られた人々に提示される場合もあります。

コレクション・マネジメント

コレクションの形成や管理に関しては、「コレクション・マネジメント」という枠組みで議論や実践の共有が図られています。コレクション・マネジメントが対象とする活動は、「コレクションに属するモノのセキュリティと管理を確かなものにするための、すべてのアクション」（Dictionary of Museology）です。

つまり、モノとそれにまつわる情報について、その取得、受入、登録、カタログ作成、保全、活用、そして除籍に至るまでのライフサイクルに関わる活動を対象とする大きな枠組みです。コレクション・マネジメントという枠組みが形成されたのは1970年頃と考えられていますが、特に欧米において議論や実践が先行して展開し、現在は、コレクションに関するすべての領域活動を包括的に捉えたシステムとして機能しています。

このコースでは、コレクション・マネジメントという大きな領域のうち、特にコレクションへのアクセスやコレクションの活用に焦点を当て、コミュニティとコレクションの関係を結び直す方法についてみなさんと一緒に考えていきます。