大学のコミュニティ・コレクション

コミュニティの集合体としての大学

大学というコミュニティは、大小さまざまなコミュニティの集合体です。大学のキャンパスを思い浮かべてみると、さまざまなグループの人々が活動しているのがわかります。専攻、学部、研究科、研究所、研究プロジェクトなど、アカデミックな専門領域に根ざしたコミュニティもあれば、文化・スポーツ活動に取り組む学生団体のコミュニティもあります。卒業年度、出身地、生業などにより編成された同窓会もコミュニティですし、キャンパスが立地する地域のコミュニティも、大学に接続するコミュニティといえます。大学は、規模も目的も異なるコミュニティによって構成されているのです。

自律的なコレクション

これらのコミュニティは、時に相互に関係しながらも、それぞれ自律的に活動しています。そして、その活動の中で蓄積されたモノが、さまざまなコレクションを形成しています。日々、大学のどこかで形成されている自律的なコレクションの総体が、大学のコミュニティ・コレクションであると言えば、その複雑さ、捉えがたさが容易に理解できるでしょう。この自律性は、モノの収集方針があり、その方針を中心にコレクションが形成されていく一般のミュージアム・コレクションと大学ミュージアムの大きな違いでもあり、同時に大学のコレクションの魅力でもあります。キャンパスの中に、見たこともない面白いものが隠れていて、ある日不意にそれに出会う、宝探しのような楽しさを持っています。

使うためのコレクション

大学のコレクションの多くを占めるのは、やはり、アカデミックな専門領域に根ざしたコレクションです。大学の活動の中心は研究と教育にあり、収集、購入、寄贈とさまざまな方法によって、その活動に必要な膨大なコレクションを形成してきました。学術標本、実験器具、貴重書、古文書、芸術作品･･･コレクションの内容は、専門領域によってさまざまです。しかし、アカデミック・コレクションに共通する特徴は、研究・教育の資料や教材として「使う」ためのコレクションであるということです。身近にコレクションを置き、研究、教育活動の中で直接に触れ使っていくことは、それを使う人とコレクションの間に非常に強い結びつきを生み出します。この人的な繋がりの強さ、言い換えれば属人性は、アカデミック・コレクションの特徴の1つです。

コレクションはどこにあるのか

このような特徴をもった大学のコレクションは、実際どこで保管され、使われ、ときに展示されているのでしょうか。多くの大学の場合、大学ミュージアムがコレクションの管理を担っています。大学コレクションの歴史は古く、ヨーロッパ中世時代の大学に遡りますが、近代的な大学ミュージアムは、オックスフォード大学のアシュモリアン博物館（1683年開館）からはじまると考えられています。現在は、様々なミッションや目的をもったユニークな大学ミュージアムが、世界中の大学に設置され、活動を展開しています。

しかし、大学のコレクションのすべてが大学ミュージアムに管理されているわけではありません。これまでみてきたように、大学のコレクションは自律的に形成され、それを使う人たちとの強い結びつきのもとに存在しています。そのため、ミュージアムではなく、コレクションが属するコミュニティの内部で管理されることも多いのです。研究所の保管庫や、学部の共同研究室の一角、研究プロジェクトのレンタル倉庫、あるいは教授の研究室の片隅など、様々なところにコレクションは存在しています。