慶應義塾大学のケース：キャンパスに点在するコレクション

このステップでは、慶應義塾大学のいろいろなコレクションのあり方をみていきましょう。長谷川先生が複数のキャンパスに点在する様々なコレクションを紹介する様子をご覧ください。

慶應義塾大学は近代大学として日本で最も古い歴史を持つ大学のひとつで、6つのメインキャンパスをもち、10の学部・14の研究科と複数の専門研究所で構成されています。また初等教育校から高等学校まで9校の一貫教育校が設置されていることも特色となっています。そうした幅広い領域やコミュニティがクロスする場では、さまざまコレクションが形成され活用されています。

^{メディアキット 拡大して見る}

① 活用される学術コレクション

例えば慶應義塾図書館では、日本の江戸時代初期以前、中国の宋元版（そうげんぱん）以前の和漢籍、そしてグーテンベルク聖書をはじめとした西洋17世紀以前の貴重書など約1万点を収蔵しており、それらの貴重資料はデジタルコレクションとして、オンライン公開も進められています。

慶應義塾大学メディアセンターデジタルコレクション

貴重書を授業で活用する取り組みもおこなっており、専門家の指導のもと、学生が貴重な書物に接近して学べる機会を提供しています。

^{貴重書室での授業の様子（KeMCo講座）}

また、大学の研究所である慶應義塾大学アート・センターには、舞踏をはじめとしたパフォーミング・アーツや詩、建築などを含めた戦後日本における現代美術のアーカイヴ資料が集められています。国内外からの調査も積極的に受け入れる、研究アーカイヴとしての活動を展開しています。また展示空間であるアート・スペースでは、所管するコレクションにフォーカスした展覧会シリーズを継続しておこなっており、研究・保管・活用されていくアーカイヴを展開しています。

慶應義塾大学アート・センターでは、以下の講座をFutureLearnで公開しています。興味のある方はぜひご覧ください！
Invitation to Ex-Noguchi Room: Preservation and Utilization of Cultural Properties in Universities――旧ノグチ・ルームへの招待：大学における文化財の保存と活用
Exploring Japanese Avant-garde Art Through Butoh Dance

② 大学組織としての美術品の管理に取り組む

慶應義塾大学では、芸術の専門研究所である慶應義塾大学アート・センターと大学法人の管理部門とが共同して、美術コレクションを継承していく組織体「美術品管理運用委員会」を大学として運営していることが特徴的です。一貫教育校も含めた学内に点在する美術作品の把握・共有、そして作品取り扱いの相談や修復活動などを行い、大学というコミュニティが一体となり、コレクションを支え考えていく場が形成されています。

^{委員会の活動（美術作品の調査とメンテナンス）}

③ 一貫教育校で息づくコレクション

大学組織のほかに小・中・高等学校といった一貫教育校が存在し、それらの組織でも独自のコレクションが育まれていることも慶應義塾の特徴です。

慶應義塾幼稚舎にあるサイエンスミュージアムは、標本類や鉱石類といった生物・地学資料、そしてビオトープといった生きた資料体が存在し、児童たちは日常の学校生活の中で自然科学領域のコレクションに接する機会をもっています。

^{サイエンスミュージアム}

横浜初等部にある福沢先生ミュージアムでは、大学の研究所・福澤研究センターが協力し、慶應義塾の創立者が残した言葉や資料を小学生にとっても理解しやすいよう紹介し、日々の学校生活の中で建学の精神を知ることができるよう設計されています。

^{福沢先生ミュージアム}

それぞれのコレクションは各教員・学部・研究所・部署で形づくられ点在して存在し、授業で用いられたり、展示として一般公開されたり、デジタル・コンテンツとなったりとその活用は極めて多様です。そして、この他にもそれぞれのコミュニティに即したコレクションが存在しているのです。