移転を経て広がってゆくミュージアム - 九州大学

ここからの2ステップでは、日本の大学ミュージアムの挑戦を紹介します。1つ目は九州大学総合研究博物館です。

2005～2018年に大規模なキャンパス移転を経験した中で、コレクションがどのように見直され、コミュニティの中に再接続されてきたのか、ビデオでは教授の三島美佐子さんに話を伺いました。

ビデオで紹介されたキャンパスの移転やコレクションをめぐる活動について詳しく見てみましょう。

九州大学の移転と総合博物館について

九州大学は、福岡県に位置する国立大学です。1911年の創設時以来、ターミナル駅や空港に近い都心部の箱崎にキャンパスを置いていましたが、2005年～2018年にかけて全学移転を行い、現在は郊外の緑豊かな伊都地域に位置しています。

現在、九州大学総合研究博物館は箱崎キャンパス跡地の旧工学本館という歴史的建物物に残り、常設展示室などを一般公開しています。一方、移転先の伊都キャンパスにも、企画展示を主体としたフジイギャラリーや、新たに整備された収蔵庫があります。また、伊都キャンパス内では各学部、部局が参加して、大小様々なスペースや展示ケースをつかった展示が行われています。

^{拡大して見る}

^{フジイギャラリー}

^{旧工学本館}

九州大学歴史的什器保存再生プロジェクトについて

三島さんの携わる歴史的什器の救済・保存と、再利用や在野保存などの再生プロジェクトは、キャンパス移転をきっかけとして始まりました。箱崎キャンパスには、椅子、机、棚のような家具、器具、機械といった什器が大学設立当時から蓄積され、使われ続けていました。ところが、そうした什器の多くは移転先のスペースの問題や、現代の規格や目的に合わないなどで使えないことになり、その歴史的価値を顧みられることなく破棄されつつありました。

三島さんと有志の教職員の方々が、これらの什器をレスキューし保存する活動を移転開始前後から始め、現在はその利活用や家具研究を続けています。最後の移転では、レスキューのためには学内外から多くの人を巻き込むことが不可欠だったため、2018年にクラウドファンディングも立ち上げ、大成功を収めました。

参考：2018年に行ったクラウドファンディング

在野保存先の声

ビデオで紹介したように、レスキューされた家具は街中の様々な場所で使われ、保存されています。この在野保存の活動に賛同して参加する施設の1つ、福岡県立美術館喫茶室では、大きな書棚などを借り受け、喫茶室の内装の一部として活用しています。

店主の花田典子さんは、キャンパスのあった箱崎地域の歴史・文化資源を探索する活動などを通して、九州大学総合研究博物館のコレクションとつながる人々のひとりです。

花田さん

Q.きっかけは？

「引っ越しの時にいろんなものが、ガラスのものとか、いろんなものが捨てられていてもったいないなと思ってたんですよ。でも、持って帰ることもできないしと思っていた時に、三島先生が在野保存で集められてて。」
「この場所（県立美術館喫茶室）を借りたいと言ったらOKが出たんで、それですぐ三島先生に、什器を使わせてくださいとお願いしました。」

「すごくいいですね。落ち着くなあって言って。特にこんな大きい什器ってめったに見る機会ないし、入る場所がないですよね。ここだからですよね。」