KeMCoの活動と「空き地」というコンセプト

前のウィークでは、大学ミュージアムの活動に焦点をあて、コミュニティ・コレクションが抱える課題やそれに対するアプローチについてみなさんと一緒に考えてきました。コミュニティを取り巻く状況やコミュニティ自体の変化にあわせて、コミュニティとコレクションの関係を絶えず繋ぎ直すためにはどうしたらよいのか。この大きな問いに対する1つの応答として、「空き地」というコンセプトを用いて、コレクションを人々の関係性の中に置き、コレクションを豊かな接点を内包する状態に育てるという提案をしました。

今日からはじまるこのウィークでは、「展覧会」「ラーニング」「場をつくる人々」という3つのテーマを設定して、「空き地」というモデルのもとで、具体的にどのような活動が展開されていて、どのような新たな発見があるのか（ありうるのか）について、KeMCoの実践を例にとって考えていきます。

KeMCoの活動

KeMCoの活動はそれほど大規模なものではありません。慶應義塾のコレクションにもとづく展覧会を年間4本ほど開催しながら、展覧会に関連するワークショップなどのイベントを実施する、というのが中心的な活動です。一方で、小ぶりな展示室・廊下など展示室外でも展示ができるといった施設の特性を活かして、機動的な企画―ごく短期間の展示や、研究・教育の成果をクリエイティヴに表現する展示など—も行っています。また、研究機構として、大学の全学部を対象とする授業を開講したり、デジタル・アーカイヴの開発・運営を担ってもいます。

最初のテーマ：展覧会

最初のアクティビティのテーマは「展覧会」です。前のウィークで紹介したように、慶應義塾においては、コミュニティ・コレクションの自律性が非常に高く、どこにどんなコレクションがあり、どのような活動を行っているのかよく分からない状態にあります。そこでKeMCoでは、はじめの一歩として、「『空き地』にコレクションを持ってきて見せてもらう」ことを目的とした展覧会を企画することにしました。このアクティビティでは、2つの展覧会の紹介を通じて、「共有」に焦点をあてた展覧会の実践についてみなさんと考えます。

とりあげる展覧会

1つめの事例は、2021年、KeMCo開館の年に開催した展覧会「オブジェクト・リーディング：精読八景」です。慶應義塾大学で活動する8つのチーム（コミュニティ）が参加したこの展覧会では、作品や資料とあわせて、それぞれの専門領域におけるドキュメンテーションの方法を提示することで、コレクションと専門領域との繋がりを浮き立たせることを試みました。

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2つめの事例としては、新年に毎年開催している「KeMCo新春展」シリーズから「うさぎの潜む空き地」を紹介します。こちらの展覧会は、慶應義塾のさまざまなキャンパスから、その年の干支と関わりのある作品や資料が集まってくるという、非常にシンプルな企画です。構成や体験の複雑さには違いがありますが、両者とも、コレクションを持ち寄って共有することを根底に据えた展覧会です。

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次のステップから、それぞれの展覧会がどのような「空き地」として機能したのか、またそこにどのような発見があったのかを見ていきます。