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Ion Trap/イオントラップ

Ion Trap/イオントラップ
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© Keio University

最近になって、単純なエネルギー準位や超微細な分裂のいずれかの原子のエネルギー準位によって、有用な量子ビットを作ることができることがわかってきました。一般に原子は(固体、液体または気体であろうと)多くの原子を有するマテリアルの一部で、孤立して存在しているわけではありません。個々の原子を個別に制御するには少し工夫が必要です。さてどうすればこのようなシステムを構築できるでしょうか?

真空中のイオン

通常時に原子は電気的に中性であり、原子番号と同じ数の電子が軌道上に存在します。しかし、電子を取り除く(または加える)とその原子は正(負)に帯電します。このような正(もしくはあまり一般的ではありませんが負)に荷電した原子はイオンと呼ばれます。

正のイオンは、負に帯電したマテリアルに引き寄せられるか、また電磁場を用いて制御することができます。イオンを真空中に置くと、それを他の原子から隔離し、電場と磁場を使って空中(真空中)に保持することができます。これをイオントラップと呼びます。イオントラップ内の原子は、ほぼ完全に孤立した理想的な量子ビットとなります。

リニアパウルトラップ

イオントラップの第1の形態は、ワイヤーまたはカミソリ状の電極からそれぞれ来る4つの電場の組み合わせを用います。これはWolfgang Paulによって考案されました。 このうち2つの電場については不変ですが、それ以外の電場は無線周波数で振動しイオンを1つの場所に保持する定在波の電界を生成します。1〜2センチの電極が数ミリ間隔で平行に配列されています。下のインスブルック大学のトラップの側面図では、大きさの比較対象として1ユーロ硬貨が並べられています。

a linear ion trap IQOQI Innsbruckによる画像提供

トラップは真空容器の中に設置して用いられます。この真空容器(一般的に数十センチですが、研究者はずっと小さな容器で作業しています)の精度は国際宇宙ステーションの高度における1立方メートル当たりの原子数よりも少ない程度です。

この種のトラップは2つ以上のイオンを保持することができます。 これらのイオンは線上に数ミクロンの間隔を空けて配置され、定在波は静止点を生成しています。 最大14個までの原子がトラップされ量子ビットとして用いられます。

イオンは容器の外部から照射されるレーザー光のパルスによって制御することができます。異なる波長の光は、原子の冷却を保ち、量子ゲートを実行したり、イオンを測定したりするなど、さまざまな目的に使用されます。一般的な量子ビット測定方法は蛍光を使って原子が光子を吸収、再放出する仕組みを利用し、放出する光によってイオンを見るという手法です。ここで使用されるレーザー光は、例えば(vert 1rangle)状態では蛍光発光、(vert0rangle)状態ではしないように調整されます。

もちろん単一のゲートだけでなく、2量子ビットゲートについても考えなければなりません。 イオントラップでは、電磁場を調整することで2つの原子を一緒に振動させることができます。 ある一定の時間2つの原子を振動させることで、互いの状態を交換します。 その半分の時間だけ振動させることで部分的に互いの状態を交換され、量子もつれの状態にすることができます。 これを2つのイオンを使ったCNOTゲートの構築に応用できます。他にも、一方または双方から放射された光を使用して離れているイオンを結合するという方法もあります。

表面トラップ

もちろん14量子ビットというのは驚異的な成果ですが、複雑なエラー訂正や興味深い量子アルゴリズムを実行するにはまだ十分とは言えません。 新たな解決策として表面トラップという優れた手法が知られています。(本稿の最上部に表面トラップの写真があります。)

a surface ion trap showing the control electrodes and laser beams 画像はJungsang Kim氏より。「トラップされたイオンは完全な量子ビットを生成する。」(2014.11.24 Physics 7, 119 https://physics.aps.org/articles/v7/119)

表面トラップでは数十ミクロンから数百ミクロンの小さな電極を多数使用し、各電極を個別に制御することで近くに小さな電磁場を作り出すことができます。 そしてトラップの表面上の電磁界に浮遊している個々のイオンを操作することができ、くっつけたり離したりと思い通りに動かすことができます。電極を配置を操作することで、イオンが2次元上の経路に沿った移動を可能とし、量子ビット同士の相互作用を実現します。

強度

イオンは何らかの固体の一部ではなく真空中に浮遊しています。 このため、量子ドットや超伝導量子ビットなど他の電子や核との望ましくない相互作用によってデコヒーレンスを引き起こしてしまう系よりも、容易に周りの環境から隔離できます。 従って、トラップされたイオン量子ビットは非常に長い寿命を有し(約1分にものぼる)、他のタイプの量子ビットより大きなオーダーになります。 レーザー光はかなり精密に制御することができるので、ゲートも非常に高精度で実現できます。 すなわちイオントラップは量子アルゴリズムを実証するための最先端のプラットフォームといえるのです。

一方で考えられる課題としてはその規模的問題、インフラ、時間的問題が挙げられます。 (特に規模とサポートインフラストラクチャは多くの技術における課題になっています。)今のところ、どんなにコンパクトな表面トラップであったとしても、トランジスタに比べればまだまだ大きいうえに真空容器も依然として大きいため、研究室において1立方メートルあたりの量子ビット密度をいかに大きくするかという問題はかなり重要です。

ある研究者グループは最近、システム全体にわたって超高真空を必要とするモジュール式イオントラップシステムを用い、サッカー場全体をカバーするほどのサイズのイオントラップシステムの設計を提案しました。 多くのレーザービームを生成・ルーティングさせる必要があり、その点においてインフラはかなり難しい技術的課題になります。 また、2量子ビットゲートの実行に応じてイオンを移動させるのは時間がかかります。そのためゲート実行に一部の個体素子系よりも数桁長い時間がかかります。ただしフィデリティの高さにより誤り訂正は簡単になるため、それらの欠点を相殺することができます。

© Keio University
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