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ノグチ・ルームの成立背景

ノグチ・ルームの成立背景
© Keio University

三田キャンパスにある/あった文化財の中でも、このコースのメインテーマである「ノグチ・ルーム」は、彫刻家のイサム・ノグチ*(1904-1988)が生み出した空間デザインとして、高い価値を持っていました。このステップではイサム・ノグチと慶應の関わり、そしてノグチ・ルーム成立までの過程を追ってみましょう。

イサム・ノグチ ノグチ・ルームをデザインした頃のノグチ

1950年、すでに彫刻家としての国際的な名声を獲得していたイサム・ノグチは、慶應義塾大学を訪問しました。慶應義塾ではノグチの父である野口米次郎(1875-1947)が40年に渡り教鞭を執っており、ノグチとも縁のある大学でした。その際彼は、前日に出会っていた建築家の谷口吉郎や猪熊弦一郎、菊池一雄など慶應義塾に作品を提供した芸術家とともに、塾長を訪問します。同い年のノグチと谷口は意気投合し、ノグチは翌日には谷口から共同制作の申し出を受けています。そして「造形交響詩」の一章として計画中だった研究室棟の一区画を利用して、空間デザインを担当することになりました。その結果第二研究室棟の談話スペースとして完成したのが、「ノグチ・ルーム」と呼ばれる空間なのです。

ノグチはのちにこの経験について語る際に、以下のような言葉を残しています。

この仕事を私がやるのは、私が単に父の息子であるからと言うだけでなく、彼の詩の中に体現された東洋と西洋との両観点の結合と言うことに、丁度背景の点でも亦そのように生まれて居る点でも、適当して居る体と考えたかったのです。
(野口勇「仕事について」『新建築』第27巻2号、1952年2月)

ノグチは太平洋戦争中、アメリカ本土で日系人の強制収容所に入れられていますが、日本人から見れば彼は外国人でした。この点にアイデンティティの断絶を感じていたノグチにとって、「ノグチ・ルーム」をデザインするという行為は、自らのルーツである東洋と西洋とを統合するという内的動機に基づくものでもあったのです。そしてそれは、東洋的な意匠と西洋的な意匠の融合という形をとって「ノグチ・ルーム」において表出することになりました。

一方で芸術家としてのノグチにも、この仕事に対する高いモチベーションがありました。彼は彫刻家として活動していましたが、建築と彫刻、そしてそれを取り巻く自然環境を調和させた空間芸術の実現に強い興味を持っていたのです。後のステップで詳しく触れるように、ノグチは兼ねてから人工物と自然素材との融和を作品で実現しようと試みていました。それは建築と調和した、家具調度を含めた空間デザインと、付属して設計された庭園、さらにそこに設置された彫刻作品からなる総合芸術だったのです。

こうした意識は、「ノグチ・ルーム」を内包する第2研究棟を設計した谷口とも多かれ少なかれ共通しているといえます。例えば、彼は自らが設計した校舎の前庭に設置するため、菊池一雄(1908-1985)による《青年像》を取得するなど、建築だけでなく周囲の環境との総合的な効果を狙っていました。つまり「ノグチ・ルーム」は、単一の芸術分野を超えて創造力を発揮する二人の芸術家が慶應義塾を舞台に出会った結果として世に生まれた、計り知れない芸術的価値を有する「作品」であったといえるでしょう。

イサム・ノグチ(1904-1988)

彫刻家、造形作家。ロサンゼルスに生まれる。日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれ、幼少期を東京および神奈川で過ごす。13才で単身渡米、コロンビア大学医学部を中退し、彫刻家を志す。ニューヨークの美術学校で学んだ後、パリのブランクーシのもとで学び、強い影響を受けた。また彫刻から出発し、インテリア・デザインから公園などの大規模空間デザイン、舞台美術まで多様な造形制作活動を展開した。

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Invitation to Ex-Noguchi Room: Preservation and Utilization of Cultural Properties in Universities――旧ノグチ・ルームへの招待:大学における文化財の保存と活用

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