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材料を観察する

材料を観察する

紙の原材料は植物ですが、その植物によって紙の特徴が左右されます。その特徴はどこからくるのか、実際に原材料の植物繊維を見てみましょう。

まず、白戸先生が17世紀後半に出版された書物を分析するこのVideoをご覧ください。

原材料の観察

和紙の主原料となる植物は双子葉植物に分類されます。双子葉植物の繊維(セルロース)形態は、同じ植物においては同一の形状が見いだされます。この点を利用し、紙の繊維を拡大して観察することで原材料植物が何であるかを推測します。

材料がわかると、それがどこからきた本なのかがわかります。例えば、漢籍と和刻漢籍では、装訂だけではなく紙が全く異なります。漢籍に用いられているのは「竹紙」と呼ばれる紙です。竹紙の原材料であるモウソウチクは単子葉植物で、双子葉植物とは異なり、さまざまな形状の繊維細胞があるのが特徴です。日本では竹紙をつくることが出来なかったため、和刻漢籍には竹紙ではなく、楮紙が用いられています。表紙や刊記が無い状態であっても、紙の繊維を観察することで、和刻漢籍であるか中国で作成された漢籍であるかがわかります。

また、材料の特定は、書物の修復作業などでも大切な作業です。修復現場などでは、処理を施す対象となる書物と、可能な限り同じ紙を使用することが求められます。人体の移植同様、書物も本来持つ原料と同じ紙を用いて修復することが望ましいのです。例えば、手触りや色だけで雁皮とは判断できません。打ち紙した楮紙や三椏の紙である可能性があります。観察をすることで、より正確にその本の材料を特定することができるのです。

このように、繊維の観察は、書物を未来に伝えるためにも是非普及して欲しい方法です。

ビデオで紹介している書籍

  • 「保暦間記」 ほうりゃくかんき 〔江戸初期〕写 袋綴 一冊
    詳しく見る
  • 「歌仙金玉抄」かせん きんぎょく しょう 二巻 天和三年(1683)刊 袋綴 二冊
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参考資料

以下に観察者のための参考情報を紹介します。皆さんがもし観察する機会がありましたら、お役立て下さい。

原料植物 繊維形状 繊維のサイズ
苧麻magnified paper 扁平又は円筒形。縦の裂け目がある。断面は鋭角な多角形か楕円形。 長さ:60~250㎜
幅:10~80µm
magnified paper 幅は広いものと狭いものがある。線条痕、断層、十字痕あり。幅が細いものは先端が尖り、広いものは丸い。横断面は楕円形。 長さ:6~21㎜
幅:10~30µm
雁皮magnified paper 扁平あるいは円筒形。線条痕、結節あり。先端が丸い。 長さ:3~5㎜
幅:10~30µm
三椏magnified paper 整形で中央部の幅は他の部分の幅の約2倍。先端は丸く、ときには分岐。 長さ:3~5㎜
幅:10~30µm
モウソウチク(単子葉)magnified paper 双子葉植物にはみられない細胞繊維が多い(導管節や表皮細胞など)。 長さ:1.5~4.4㎜
幅:6~27µm

参考情報

苧麻

非常に長い繊維なので、ほぼ切断されているのが特徴です。また他の繊維と比較して幅が広く、リボン状。紙の白色度は高いが、表面が粗い。

雁皮や三椏よりも長い。紙の白色度が高い。

雁皮

先端の丸みが特徴。紙の白色度はあまり高くない。

三椏

繊維は1本をじっくり見ると、先端と中央で太さが異なるのが特徴。紙の白色度はあ まり高くありません。

This article is from the free online

古書から読み解く日本の文化: 和本を彩る和紙の世界

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