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近世版本の書型と内容

近世版本の書型と内容
© Keio University
近世期に出版された冊子体の書物の寸法には、決まった規格があります。その規格ごとに、書物の内容も一定の傾向が定まっていることが大半です(ただし、もちろん例外はあります)。ここでは近世版本の主要な書型と、その内容上のおおまかな特性について整理してゆきます。

以下は、本ステップで紹介する9つの書物のサイズ比較を示しています。

Various sizes of old Japanese books introduced in this step

1. 大本(縦約27cm✕横20cm)

Nihon shoki(Chronicles of Japan), Kan’ei-era edition 図1. 『日本書紀』[寛永]刊 十五冊
左:巻頭/右:表紙
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【書型上の特徴】 和紙を漉く際の標準的なサイズの一つである美濃紙判(縦約27cm×横約39cm)を二つ折りにした大きさ。この大本よりも更に大きなものを特大本と呼ぶ。

【内容上の特徴】 儒学・漢学・仏教・和歌・和学などに関する古典の原典や本格的な学術書など、堅い内容の本。実用的な書型の内では最大であることから、伝統的な権威ある分野に関する本格的な内容の書物であることが多い。

2. 特大本

Japanese old book in the box 図2. 『集古十種稿』箱入
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【書型上の特徴】 大本よりも大きな本の総称。

【内容上の特徴】 大本以上の大きさの書物になると、大きすぎてやや読みにくい。このため、大きな画面を必要とする図や絵を多用した書物や、大きさによって権威を表現しようとする大名の出版物などにこの書型が用いられることが多い。

3. 半紙本(縦約24cm✕横17cm)

Japanese old book 図3. 大和俗訓
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【書型上の特徴】 和紙を漉く際の標準的なサイズのひとつである半紙判(縦約24cm×横約33cm)を二つ折りにした大きさ。

【内容上の特徴】 儒学・仏教・和学・歴史などの本格的な学問の入門書など大本に比べて一般向け、啓蒙的な内容の書物や、絵本や俳諧書などが多い。

4. 中本(縦約19cm×横13cm)

Japanese old book 図4. 名所風俗金王桜
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【書型上の特徴】 大本の半分(縦約19cm×横13cm)の大きさ。つまり美濃紙判の四分の一の大きさ。

【内容上の特徴】 草双紙などの大衆的な小説や、遊廓のガイドブック(『吉原細見』)など、通俗的で柔らかい内容の本や、料理や旅行案内書などの実用的な本が多い。

5. 小本(縦約17cm×横12cm)

Japanese old book 図5. 歌文要語
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【書型上の特徴】 半紙本の半分の大きさ。つまり半紙判の四分の一の大きさ。

【内容上の特徴】 携帯性を重視した簡略な辞書、和歌・漢詩などを創作する際に使う語彙集、洒落本・噺本など滑稽な内容の娯楽的な読み物、俳諧書などが多い。

6. 特小本

Japanese old book 図6. 谷口樵唱
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【書型上の特徴】 小本よりも更に小型の本の総称。

【内容上の特徴】 小さすぎて実用的な大きさではないことから、文人や大名などによる漢詩文集・和歌集や、一種の調度品として作製された書物など、趣味的・好事家的な書物が多い。

7. 縦長本

Japanese old book 図7. 竹田荘詩話
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【書型上の特徴】 縦横の比が縦に寄っている本の総称。

【内容上の特徴】 中国趣味の文人による漢詩文集や法帖などが多い。

8. 横本

Eisō satoshigusa, Yokohon 図8. 詠草さとし種
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【書型上の特徴】 特大本・大本・半紙本・中本・小本に使用する紙を横に二つ切りないし三つ切りし、横綴じにした本の総称。四つ切りの場合もあるが極めて稀。

【内容上の特徴】 役者評判記や戯作・俳諧書といった娯楽的な書物、辞書や人名録、年表など実用的な書物、また和歌や漢詩、俳諧などの入門書など、通俗的・啓蒙的な内容の書物に用いられることが多い。

9. 枡形本

Japanese old book 図9. 奥の細道
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【書型上の特徴】 縦横比がほぼ等しく、正方形もしくはそれに近い寸法の本の総称。

【内容上の特徴】 近世期の版本では枡形本の形で出版される書物は少なく、一概に特徴を述べることは難しい。写本では中世期以来、王朝物語(及び擬古物語)や和歌などの豪華な写本、または仏教関係の書物に枡形本が用いられる事が多いことから、近世版本でも和歌や物語書を意識した書物や、一部の仏書に枡形本の形で刊行されるものがある。

まとめ

上記の整理からもわかる通り、近世版本においては書型と内容とは深く関係しています。あまり実用的ではない特大本と特小本、また特殊な例である枡形本を除けば、大本を頂点として、大きさの順に、書物の内容が社会的地位の高いものから低いものへとなってゆく傾向がはっきりと見て取れます。近世日本には、人間ばかりではなく、書物の身分制も敷かれていたのです。

© Keio University
This article is from the free online

古書から読み解く日本の文化: 和本の世界

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