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手彩色の絵入り本

手彩色の絵入り本
© Keio University

絵入り写本と絵入版本の関係で興味深いのは、手彩色の絵入り版本の存在です。

この本『岩屋の草子』(図1)も、本文は木製活字で刷られており、そこに枠を有する挿絵が加えられているのですが、こちらには赤や緑など数色がかなり大雑把に手彩色されています。

*Iwaya no sōshi* 図1.『岩屋の草子』
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実はこのような彩色も、西洋の印刷本の挿絵にあるものであり、やはりその影響を想定したくなるのです。ともかくも、こうした彩色が絵入り写本を意識して行われたことは疑いありません。このような赤・緑・黄色などの数色による手彩色が施された絵入り版本を、使用した色の特徴から「丹緑本(たんろくぼん)」と呼びます。1620年代頃からの数十年間に限定される珍しいものです。現在でも高額で取引されるために、同時代の版本に後に色を加えたものも多いので注意が必要です。最初にあげたのは丹緑本の中でも珍しい古活字版の例であり、整版のものの方が多く現存しています。彩色の特徴をつかむために、整版の2例を挙げておきます(図2、図3)。

*Tengu no dairi* 図2. 『てんくのたいり』
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*Bunshō no sōshi* 図3. 『ぶんしゃうのさうし』
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商品としての版本において、挿絵は重要なセールスポイントであったことは明らかであり、最初は文字だけで出版したものに、後から挿絵を加えたり、和歌集のような特に必要でないものにまで、挿絵が入れられたりするようになりました。挿絵は版本の重要な要素となったのです。

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