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Not Supercomputing, Not Big Data/スーパーコンピューティングやビッグデータには向いてない?

Not Supercomputing, Not Big Data/スーパーコンピューティングやビッグデータには向いてない?
量子コンピュータは大量のデータを扱う気象シミュレーションなど,いわゆるビッグデータの処理には向いていません。一体どういうことか,以下の説明を追って見ていきましょう。それを理解することで、逆に量子コンピュータがもっとも活躍できる領域が明らかになってくると思います。

データ集約型スーパーコンピューティング

いわゆる”スーパーコンピュータ”は一般的なPCの数百倍のメモリー、ディスクスペースを持ち合わせており、みなさんがお持ちのコンピュータでは到底扱えないような規模の処理をすることができます。 今日ではおよそ数千〜数万倍のCPU(コンピュータの脳に当たる部分)パワーを持っています。 もちろん、テクノロジーの進歩とともに「スーパー:コンピュータの定義は、より高速に、より巨大に日々変化しています。 世界でもっとも高速な数千台をスーパーコンピュータと呼び、それ以外は一般のPCだ、というように捉えることもできます。そしてスーパーコンピュータを動かすは、数百キロワットからメガワットレベルの膨大の電力と、数百万から数千万ドルの巨額の資金を必要とします。

スーパーコンピュータは気候シミュレーション、地震シミュレーション、石油・ガス探索のための地質データの解釈など、数々の重要な処理に用いられています。 これらは全てまさにデータ集約型アプリケーションであり、センサーによって収集される数テラバイト分ものデータがコンピュータに入力される必要があります。 例えば流体シミュレーションによる飛行機や宇宙船の設計を行うにあたっては、初めは翼の形状や風についてのデータなどほんの少しの入力データから始まりますが、処理を進める過程で膨大なデータが新たに生み出されます。 この新たに生み出されたデータを蓄え、さらに実測データと比較するといった処理も行う必要があります。

上記に見てきたような手法では,コンピュータには膨大なデータが入力され,さらにそれらが処理され新たに生み出されたデータも蓄える必要があるわけですが、もちろんそれらは、外部ディスクを利用したり、ネットワークを経由して別のコンピューターとやりとりする、ということになります。

ビッグデータ

今日において最も注目されるトピックの一つとしてビッグデータが挙げられます。 ビッグデータとは、ただ名前通りの膨大な数のデータであるだけではなく、その内容は、人々の消費行動やどこへ訪れたか、どんなウェブサイトを閲覧したかなど人間の行動に関するデータであることがほとんどです。 このように行動に関するデータを集めることで、その人物の指向に基づいた製品や好みの音楽などを見つけやすくすることができます。 しかし人間の行動は必ずしも規則的であるとは言えません。 データの世界においてもこれは同じであり、規則性を見つけるためには多くの視座が必要になります。

揮発性記憶装置・不揮発性記憶装置

コンピュータの記憶装置には、電源を切った時にそれまでのデータを失ってしまう揮発性のもの(例えばみなさんがお持ちのコンピュータのRAM)と、電源を切ってもデータを失わない不揮発性(例えばUSBフラッシュメモリやコンピュータのHDD)の二種類があります。大雑把に言うと、揮発性メモリはコンピュータが実時間処理を行う際に必要とする一時的なデータの保管場所で、不揮発性メモリはユーザが保存しておきたいデータを長期的に保持する記憶媒体です。

今のところ量子コンピュータは揮発性メモリしか持ち合わせておらず、構造上そのデータはとても壊れやすいと言う特徴を持っています。”量子ハードディスク”のようなものもまだ存在しないためこの部分は大きな課題となっています。さらに言うとほとんどの場合において量子データは効率的に処理するために形式を変換して運用するため、従来のコンピュータと同じ要領で保存したり再利用することはできません。

量子コンピュータが扱えるデータ量はまだまだ少ない

みなさんのコンピュータはおそらく数ギガバイトのメモリと約1テラバイトのディスク容量を持ち合わせていると思います。 一方スーパーコンピュータは数テラバイトのメモリと数ペタバイト((10^{15}) bytes)のディスク容量を持っています。

先程述べた通り、量子コンピュータの扱えるデータ量は数量子ビット〜数十量子ビットとまだまだ十分ではありません。 テラバイト規模の量子メモリが開発されるまでにはまだ数年かかると見込まれています。 そのため、短期的には一度に数量子ビットのみを扱う量子アルゴリズムに注力することになるでしょう。

データの出入力

スーパーコンピュータはデータの入出力をかなりの効率(精巧に作られたシステムについては処理速度と同じ速さで読み込みが可能なほど)で行うことができます。

多くのタイプの量子コンピュータ技術の弱点の一つとしてこのデータの入力や読み込みが従来のものに比べ非常に遅いことが挙げられます。

デバイス固有の物理的性質上の制約で効率的なデータの読み込みが難しものもありますが、工学的に課題が解決され、効率よくデータの入出力が可能となるのも時間の問題、という技術もあります。

このことは最近の機械学習アルゴリズムの議論にとって注意が必要な重要な点ですが、ある条件下で、量子コンピュータと従来のコンピュータを組み合わせるといった解決方法も模索されています。

より魅力的なスーパーコンピューティングの応用範囲とは?

ここまでビッグデータ領域において量子コンピュータはあまり向いていない、むしろ従来のスーパーコンピュータの方がこの領域における重要な役割を担っていることが理解できたかと思います。 ではスーパーコンピューティングの応用範囲において量子コンピュータが競争力をもつような分野はあるのでしょうか?

実は、今まで学んできた素因数分解や量子化学、機械学習などは従来のスーパーコンピュータ上で一般的に解かれている問題でもあります。 これらの領域はスーパーコンピュータにとっても解くのが難しい問題であるため、量子コンピュータはその分野で活躍することができると言えます。ただし、古典コンピュータと競合するというよりも、互いを補完しつつ共存してこれらの問題に取り組んでいくこととなるでしょう。

© Keio University
This article is from the free online

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