Skip main navigation

紙と製紙技術の伝播

紙と製紙技術の伝播
© Keio University

紙は、いつ頃、どのように世界に伝播していったのでしょうか?中国を起点に西のヨーロッパへ、そしてアメリカまでの伝播経路をたどってみましょう。

現存する世界最古の紙は中国の甘粛省天水市放馬灘から出土した地図が描かれた紙で、紀元前150年頃のものとみられています。その後、蔡倫が均質な紙を安定的に作成する製紙技術と材料を確立し、その技術と植物を原料とすることが標準化され世界各地に広まっていきました(図1)。

紙の製法の伝播図 図1 紙の製法の伝播図(提供:紙の博物館) 拡大図

中国

中国産の紙は中国にとっても重要な輸出品でしたから、製紙技術の流出は禁止され、極秘事項でした。

製紙技術は蔡倫が生み出した方法と変わないかたちで伝播していきましたが、一方で原料となる植物については、気候、緯度による植物生態系の違いがあったためその地域毎に変わっていきました。

中国では、書物が印刷され始めるとモウソウチク(図2)を原料とする紙が登場しました。竹紙の原料であるモウソウチクは、繊維化する前に一度発酵させます。この方法はレッチングと呼ばれています。

plant 図2 モウソウチク(孟宗竹)

ウズベキスタン・サマルカンド

製紙技術が中国の影響下にない国に伝播し、製紙所ができたのは751年サマルカンドが初めてです。これは唐王朝とサラセン帝国によるタラス河畔の戦いがきっかけといわれています。

サマルカンドは織物の産地で、原料の入手が容易であり、市内を流れる川の水量が豊富だったことから、この地に製紙工場が設立されました。ここで作られたサマルカンドペーパーはその後ヨーロッパにおける高級紙の地位を保っていきますが、そのことは、ユイスマンス(フランスの作家、1848 – 1907)の代表作である『さかしま』の中にも描かれています。

エジプト・カイロ

エジプトでは10世紀頃から製紙が行われるようになりました。1877年にカイロ近郊で大量に発見されたイスラムの暦(オーストリア国立図書館所蔵)を調べてみると、西暦800年代まではパピルスが使われていますが、936年以降はすべて紙に書写されています。イスラム文化圏では200年足らずの間にパピルスから紙へのメディア変換がおこったことがわかります。

ヨーロッパ

1150年、スペインのハティバにヨーロッパに最初の製紙技術が伝わりました。1276年にはイタリアのファブリアーノに製紙所が設立された記録が残されてます。その後、フランス、ドイツと製紙技術はヨーロッパ各地に広がり、グーテンベルクの42行聖書は紙と羊皮紙の両方に印刷されています。当時のヨーロッパの製紙原料は木綿や亜麻のぼろ布などでした。

アメリカ大陸

欧州の製紙技術はその後アメリカ大陸に伝播しました。1575年、南米メキシコに製紙工場が作られ、北米では、その100年以上後の1690年、イギリス領アメリカ(現在のペンシルバニア州フィラデルフィア)に初めての製紙工場が造られました。その際の原料は、ぼろ布でしたが、アメリカの独立戦争をきっかけに、新聞が大量に発行されるようになると衣料原料では追いつかない状況に陥りました。当時は新聞を印刷するための紙原料を確保するため、新聞社がぼろ布を集めるための広告を出していました。

木質パルプを材料とした製紙

新聞の役割が重要になるにつれ、印刷速度はスピードを増し、アメリカを始め、世界中でぼろ布の原料不足が深刻になってきたこともきっかけとなり、ヨーロッパで木質パルプを原料とした紙の製造が始まり、世界中に普及しました。

この木質パルプを原料とした紙の大量製造を可能としたのが1798年にフランスのルイ・ロベールが世界最初に発明した抄紙機(しょうしき)です(図3)。

抄紙機 図3 ルイロベールが発明した世界最初の抄紙機の模型(提供:紙の博物館)

このようにして、紙はその地域毎に原料を変え、需要が高まるにつれて技術を変えて伝播していきました。

参考:製紙の歴史

紙の製造の歴史 紙の製造の歴史(提供:紙の博物館) 拡大図

参考資料

  • 『新版 紙の知識』(紙の博物館、2020年、p.2、P.7)
© Keio University
This article is from the free online

古書から読み解く日本の文化: 和本を彩る和紙の世界

Created by
FutureLearn - Learning For Life

Our purpose is to transform access to education.

We offer a diverse selection of courses from leading universities and cultural institutions from around the world. These are delivered one step at a time, and are accessible on mobile, tablet and desktop, so you can fit learning around your life.

We believe learning should be an enjoyable, social experience, so our courses offer the opportunity to discuss what you’re learning with others as you go, helping you make fresh discoveries and form new ideas.
You can unlock new opportunities with unlimited access to hundreds of online short courses for a year by subscribing to our Unlimited package. Build your knowledge with top universities and organisations.

Learn more about how FutureLearn is transforming access to education