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近世への接続

近世への接続
© Keio University

中世には、前のステップで紹介したような『三体詩』の注釈書(抄物)は、大量に作られました。このステップではそれらのなかから幾つかを紹介します。

書籍情報と高品質画像は特設サイトでご覧ください。

『三体詩絶句鈔』

たとえば、五山の一つ東福寺の僧侶彭叔守仙(1490-1555)の注釈書『絶句鈔』(図1)は、膨大な内容です(SEE ALSO参照)。そのうち、いくつかが近世に入って出版されました。

Old Book 図1 『三体詩絶句鈔』元和6年(1620)刊
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『三体詩素隠抄』

以下に紹介している書籍(図2)は、前のステップで取り上げた図書館の写本と同系統のもので、はじめ古活字版で出版された後、それを整版に覆刻したものです。

Old Book 図2 『三体詩素隠抄』寛永14年(1637)刊
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16世紀末に成立した抄物で、出版された抄物では、最もよく読まれたものです。ちなみに、この本で杜牧山行」は、前のステップで読んだ写本(図3)の三つの説のうち、第三の説のみを挙げて詳しく説明しています。

Old Book 図3 『三躰詩鈔』山行
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『三体詩詳解』

17世紀後半からは、近世の漢学者による注釈書も出版されました (図4)。

Old Book 図4 『三体詩詳解』元禄13年(1700)刊
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『三体詩』のテクスト、出典などの漢文の注、解釈を記した和文の注、この三種類を備えたわかりやすく使いやすい形式に整えられたものです。

ちなみに、前のステップで取り上げた杜牧「山行」の注釈を見てみると、三つの説のうち、第一の説(政治に対する不満を述べているとするもの)には全く言及していません。第二の説(登らずに麓から見ているだけとするもの)も、前半二句は登っていく途中の情景を描いているので、間違っている、としています。そして、第三の説(女性と再会したとするもの)も、「此(この)旧説(きゅうせつ)甚(はなは)ダ鑿(さく)セリ。可笑(わらうべし)」(この昔の解釈は、あまりに深読みしすぎで、笑うしかない説だ)と一蹴しています。素直な叙景詩と解釈しているのです。

『唐音三體詩訳読』

Old Book 図5 『唐音三體詩訳読』享保11年(1726)刊
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『唐音三體詩訳読』(図5)は、漢学者で唐話(中国語の口頭語)研究で知られる岡島冠山が、当時長崎に来航する中国人商人が用いた南方方言によって中国語の発音を片仮名で記した本です。

第4週で取り上げる『唐詩選』のブームのために、新たな出版はほとんど見られなくなります。日本に伝わって以来400年、長い旅が終わりました。 しかし、17世紀の間に大量に出版された書物たちは、18世紀の間も静かに読まれ続け、19世紀に入ると新たな出版が行われるようになります。

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This article is from the free online

古書から読み解く日本の文化: 漢籍の受容

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