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Writing Down Qubit States/量子状態を表現する

Writing Down Qubit States/量子状態を表現する
© Keio University

前回の動画では,量子ビットの重ね合わせと位相という、極めて重要な考え方について簡単に紹介し、2ダイヤル図を用いて状態について議論しました。 この章では、なぜ私たちが2ダイアル図を採用したのかを説明しながら、他の表記方法についても見ていきます。

ブロッホ球: 量子状態を単位球面上に表す表記法

これまで私たちは、0状態と1状態のそれぞれを表す2つのダイアルを使って1つの量子ビットを表現してきました。 しかし、状態の推移と共に変化する2つのダイアルを同時に追いかけるのは少し手間がかかりますし、片方が伸びるともう片方は縮むという変化も直観的ではありません。

動画では,(|alpha^2| + |beta^2| = 1)という等式について,(|alpha^2|)が0状態をとる確率で (|beta^2|)が1状態をとる確率であると述べました。 感のいい方は、等式の(alpha)や(beta)が円の方程式(x^2 + y^2 = 1)の(x)や(y)と酷似していることに気がつくかもしれません。 では、なぜ絶対値をとならなければいけないのでしょうか? 単純に円上の1点をもって量子ビットを表すことはできないのでしょうか?

よい所に気が付きました!

量子ビットの状態がもし振幅だけであれば、1つだけの円を用いて、その状態を記述することができます。さらに言えば、(x)の値を0状態の振幅,(y)の値を1状態の振幅と定義すれば、円の四分の一だけ利用しても十分に量子ビットの状態表記することができるでしょう。

ところが、実際は、量子ビットには振幅と位相の2つの自由度があり、この円を使った表記法では位相の情報を一切表現することができません。 任意の量子状態を書き表すには、その振幅と位相の両方に関して記述ができる表記法が必要となります。

ブロッホ球とは、単一量子ビットの振幅と位相の両方を視覚的に表現できる表記法の1つです。 (お気づきかもしれませんが、この表記法はノーベル物理学賞の受賞者であるフェリックス・ブロッホさんによって考案されました)。 常に大きさが1であるような一つのベクトルを用いて量子状態を表現し、ベクトルがブロッホ球の北極点を指しているときには0状態を表し、南極点を指しているときには1状態を表します。

ベクトルがブロッホ球の赤道上のを指しているときは、0と1の状態が同じ比率で重ね合わせの状態でることを表します。 その場合、経度(ベクトルが球の赤道のどこを指すか)は、状態の位相によって決定します。 このページ上部にある画像はブロッホ球上で取り得るベクトルの一例を表したものです。

ご覧のように、画像には(X)・(Y)・(Z)軸が書き入れてあります。量子ビットの状態はブロッホ球の球面上の任意の点で示されますが、その中でも特に、(X),(Y),(Z)の各軸の両端を指す6つの点は、それぞれ「プラス」の点・「マイナス」の点と呼ばれ、特別な点として扱われます。これらの点は、2ダイアル図を用いると、以下のように表せます。

our six points on the sphere

これらの図が何を表しているかを解説する前に、ブロッホ球についてもう少し学んでおきましょう。

半径が1の球体(単位球と呼びます)上の任意の点では、振幅の自乗の和をとると必ず1になるため、ブロッホ球では片方の状態の振幅を大きくしたときに、2ダイアル図のように、もう片方の振幅を短く調整する必要がありません。

また、球を使うことで直交する状態をうまく表すこともできます。 ブロッホ球上では,原点を挟んで対称な2点が示す状態はそれぞれ直交します。 (数学では,直交するのは角度が90度のときでしたが、ブロッホ球の場合は角度が180度のときに直交します。 これは、ブロッホ球が抽象的なモデルであり、その上のベクトルは、物理的なベクトルとは少し異なる特徴をもっているためです。)

この表記法は単一量子ビットに対する操作や測定(今週後半で解説する話題ですが)の説明に使う場合、とても便利ではありますが、複数の量子ビットの振る舞いを説明するには使えないという大きな欠点があります。 そのため、このコースでは主に複数のダイアル図を使って説明を続けることにします。

重ね合わせ

単一量子ビットについて考える時、最も重要な点は、量子ビットが重ね合わせ状態をとることができるということです。

これまで学んできた量子ビットの数学的な記法とダイアル図を使って、この重ね合わせという現象についてもう少し詳しく見ていきましょう。 前述の式では,(alpha)と(beta) の両方がゼロ以外の任意の値をとることができ、それぞれが0状態と1状態の確率振幅となります。

たとえば、以下のような式で表せる 0状態と1状態が50%ずつ重ね合わされた状態は、量子計算を語る上で欠かせない状態の一つです。 確率から確率振幅に変換する場合は、その平方根をとる必要があることに気をつけてください。

[sqrt{1/2}|0rangle + sqrt{1/2}|1rangle]

この式は、ダイアル図を使うと、次のように表現することもできます。

our "plus" state

上の式にある(vert+rangle)は、ケットプラスと呼ばれる表記で、あとで説明する(vert-rangle)(ケットマイナス)とよくペアで登場します 。

もちろん, 量子ビットは 0と1の割合が均等ではない重ね合わせ状態も取り得ます.たとえば以下のような状態です。

[1/2|0rangle + sqrt{3/4}|1rangle]

a non-50/50 state

この重ね合わせ状態は、0状態である確率が25%(1/4)で1状態である確率が75%(3/4)となります.

位相(とその幾何学的表現)

前ステップの動画で述べたように、量子ビットは波と同じく位相を持ちます。 定義により、(0)状態の位相は常に(0)で、(1)状態の位相は(0)から(2pi)までの任意の値をとります。 つまり、(1)状態の位相は(0)状態の位相に相対的なものとして定義されています。

[sqrt{1/2}|0rangle + sqrt{1/2}|1rangle]

[sqrt{1/2}|0rangle + (pi)sqrt{1/2}|1rangle]

で示される2つの状態は、よくペアとして使われる状態です。

前者は、上記に示したとおり(vert+rangle)(ケットプラス)ですが、後者は、以下のように表わされ、(vert-rangle)(ケットマイナス)と呼ばれます。

our "minus" state

(vert+rangle)と(vert-rangle)はそれぞれ直交していますが、これらは(vert0rangle)や(vert1rangle)とは直交しません。

直交する状態のペアには、他にも以下のようなものが挙げられます。

[sqrt{1/2}|0rangle + (pi/2)sqrt{1/2}|1rangle]

our pi/2 state

[sqrt{1/2}|0rangle + (3pi/2)sqrt{1/2}|1rangle]

our 3pi/2 state

これらの状態をブロッホ球上にプロットすると,それぞれの直交ペアは原点に対して対称な2点に対応します。(vert0rangle)と(vert1rangle)のペアは(Z)軸の両端に、(vert+rangle)と(vert-rangle)はX軸両端に、最後のペアは(Y)軸の両端となります.この(pi/2)の倍数の位相は、適正な干渉を生成することができるので、量子アルゴリズムが正しく動作するためには、不可欠な存在です。もちろん,(pi/2)の倍数以外でも重要な位相は存在します。

位相(のもう少し数学的な定義)

虚数や複素数についてあまり詳しくない方はこの項を飛ばして頂いても構いません。 数学的に位相について理解を深めたい方は、このまま読み続けてください。

古典的な確率論とは違い、量子ビットの確率振幅((alpha)や(beta))は0から1までの実数でなければならない、というわけではありません。 確率振幅は負の値、虚数複素数をとることもあります。 虚数は、習った記憶があるかもしれませんが、負の数の平方根として表される数です。 複素数は実数の部分と複素数の部分からなる数です。 複素数が実軸と虚軸からなる二次元平面上のベクトルとして表されることを思い出してください。

ここでは,(i)を(-1)の平方根として使います。すなわち、(i =sqrt{-1})です。 この講義では、複素数を使うことで量子状態の位相、すなわちベクトルの角度を変えることができるということだけ知っていれば十分です。 では、それはどのようにしてできるのでしょうか。 それは、以下に示すオイラーの等式(これを世界で一番美しい数式と呼ぶ人もいます)によって可能になります。

[e^{ipi} + 1 = 0]

一般的に書くと,角度(theta)に対して

[e^{itheta} = costheta + isintheta]

が成立します。

虚数や複素数は確率振幅の位相に関わってきます。 実際、これまで扱ってきたダイアルとダイアル上のベクトルは、状態の振幅や位相を表しています。 ダイアル図を使う場合は、複素数のことは気にする必要が無く、代わりにベクトルを適切に加算する必要がありました。

念の為に書いておくと,(X)軸の先端の状態は

[|+rangle = sqrt{1/2}|0rangle + (0)sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle + e^0sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle + sqrt{1/2}|1rangle]

[|-rangle = sqrt{1/2}|0rangle + (pi)sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle + e^{ipi}sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle – sqrt{1/2}|1rangle]

で、(Y)軸の先端の状態は

[sqrt{1/2}|0rangle + (pi/2)sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle + e^{ipi/2}sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle + isqrt{1/2}|1rangle] [sqrt{1/2}|0rangle + (3pi/2)sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle + e^{i3pi/2}sqrt{1/2}|1rangle = sqrt{1/2}|0rangle – isqrt{1/2}|1rangle]

と書くことができます。

物理的な量子ビット

少し先の話をしましょう。 これまで、私たちは量子ビットを全くの抽象的・数学的な対象として扱ってきました。 しかし、量子ビットを使って計算するには、それらはもちろん現実の世界に存在している必要があります。 この週の終わりでは、個々の光子や電子といった、様々な物理現象を使って実現された量子ビットについて見ていきます。 これらの現象はいずれも複雑な挙動を持ちますが、注意深く扱うことにより量子ビットとして扱うことができるようになります。 また、最後の週では量子状態を生成したり制御したりするデバイスについて学びます。

© Keio University
This article is from the free online

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