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特徴的な和紙

特徴的な和紙
© Keio University

書物や文書に用いられる紙は、記録するという目的で作られます。文字を書写するのか印刷するのか、また画像を描くのか、そして記録される文字や画像情報がどのように使われるのか、状況によって和紙は使い分けられました。

書写適性を向上させた紙

まず、実用的な目的として、書写適性を向上させた紙があります。

塋紙(えいし)

動物の牙や石などの硬くて表面が滑らかなもので磨くことにより、紙の表面を平滑にして書写適性を向上させる加工を施します(図1)。 ステップ 1.5の動画内で紹介しています。

paper 図1 塋紙
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打紙(うちがみ)

紙を木槌でたたいて表面を平滑にし、墨の色や線が鮮明になるように加工した紙、もしくは、その行為をいいます。紙に水分を含ませてからたたく場合があります(図2)。ステップ 1.5の動画内で紹介しています。

paper 図2 打紙
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礬水紙(どうさがみ)

膠(にかわ)を加熱して溶かした膠水(にかわみず)に明礬(みょうばん)を加えた溶液を塗った紙。「礬水引き(どうさびき)」ともいう。墨や彩色具のにじみをおさえ、発色を向上させる。絹にも用いられる加工で、明礬の割合が多いと酸性劣化する場合があります(図3)。

paper 図3 礬水紙
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時代的特徴のある紙

紙には、時代による流行もありました。そのような紙を紹介します。

宿紙(しゅくし)

当時版リサイクルペーパー(図4)。一度書写に用いられた紙を材料として再利用しているため、元の墨が灰色に残っているのが特徴です。平安時代から用いられています。

paper 図4 宿紙
(左)紙の博物館 所蔵
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杉原紙(すいばらがみ・すぎはらがみ)

中世から使用され始めた紙で、武人が好んで使用しました。楮を主原料とし、表面を滑らかにするために米粉を添加しているのが特徴です(図5)。

paper 図5 杉原紙
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間似合紙(まにあいがみ)

雁皮に土などの鉱物を添加した紙。強度があるため、襖や屏風などの調度品に用いられます。書物では奈良絵本に使用されています。(図6)

paper 図6 間似合紙
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漉き返し

宿紙同様、リサイクルペーパーではありますが、植物繊維以外の物質が入っているのが特徴で(図7)、江戸時代の草双紙などの娯楽本や、表紙を厚くするための補助材料として用いられました。

paper 図7 漉き返し
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テクスチャーの異なる紙

平滑性が求められる紙に、正反対である凹凸があるような、とても独特のテクスチャーをもつ紙があります。ここでは2例をご紹介します。

檀紙(だんし)

表面に皺があることが特徴の紙。檀紙の皺は製造後の加工ではなく、乾燥過程で紐に吊るすために生じます(図8)。

製造方法は極秘事項ですので詳細は伝わっていません。ただ、表面の皺は製紙工程の途中で一枚ずつの紙に加工をしています。ステップ1.11で紹介している乾燥方法ではなく、西洋の古い手漉き紙のように吊るして干しています。

paper 図8 檀紙
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縮緬

縮緬とは、本来凹凸のある絹織物のこと。縮緬本は、絹織物の布地と同じ触り心地を紙で再現しています。印刷後の楮紙に皺加工を施して作られます。

図9で縮緬加工を行う前後の違いを見ることができます。 左が原本、右が縮緬加工後のものです。ご覧のように、縮緬加工後は元のサイズより小さくなる特徴があります。

製造方法は極秘事項ですので詳細は伝わっていません。ただ、ちりめん紙は印刷し終わった複数の紙に同時に皺をつける加工をします。

paper 図9 縮緬
拡大図 [左上] [右上] []

あなたのまわりにもありますか?

このように紙にもいろいろな目的でいろいろな種類があります。あなたの文化圏で用いられた紙で、特徴的な紙の種類があれば教えて下さい。

© Keio University
This article is from the free online

古書から読み解く日本の文化: 和本を彩る和紙の世界

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