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Nuclear Spin/核スピン

Nuclear Spin/核スピン

原子は原子核と電子から成り電子は核の周りを周回しています。前回までに、電子がどのように量子状態変数を作るのに利用されているのかを学んできました。実はこの方法以外にも原子核を利用するという方法があります。慶應義塾大学の伊藤公平教授がどのように核スピンを量子ビットとして利用するのかについて説明してくださいました。

電子にはスピンがあり、周囲の磁場によって同じ方向に向けることができ、スピンアップと反対方向を向くスピンダウンがあるというのは前回までに学んできました。原子核は陽子と中性子によって構成されていることはご存知かと思いますが、それらは電荷や質量だけではなく核スピンも持っています。原子(たとえば炭素)は陽子の数は決まっていますが中性子の個数によっていくつかの種類が存在します。これを同位体(アイソトープ)と呼びます。原子核の性質は非常に複雑ですが、特定の原子の同位体については非常にシンプルに扱えるため、それらを量子ビットとして利用することができるのです。

実は量子ビットの実験に核スピンは初期から用いられてきました。スタンフォード大学でLieven Vandersypen 氏が開始し、今は大学院生が受け継いでいるチームでは、普通の水素((^1)H)とフッ素系の同位体((^{19})F)、炭素の同位体((^{13})C)が含まれた液体を用いて量子ビットを作る実験を行いました。他にもリン ((^{31})P)やケイ素((^{29})Si)、ダイヤモンドなどを用いた実験も行われています。

制御と隔離

理想的な状態変数であるには2つの条件を満たしている必要があります。1つは容易に操作ができること。もう1つは放射線や無線LAN、マイクロ波などによって状態が壊れないように環境からうまく隔離できることです。実際にデバイスを作る時には環境から隔離するための機構が非常に重要になってきます。

しかしながら核スピンというのは、その性質から、守られているといってもよい状況です。核の周りに存在する複数の電子がシールドの役割を果たし、ラジオの電波など環境からの影響を受けづらくなっています。一方で同時にこれは操作が難しく、動作や測定にも時間がかかることを意味しています。ただ、長所として量子状態を正確に長期間保つことができるので、核スピンは量子ネットワークや長時間の計算時に有用な記憶装置としての利用が期待されています。

3-Dプリンティング

この動画内で登場した3-Dシリコンモデルが必要であれば、以下の2つのファイルをダウンロードしてください。

  • ほとんどの3-Dプリンティングソフトの場合STLファイルを利用できると思います。ご自身でサイズを調整してご利用ください。プリンターのセッティングの際はサポート材は使わずラフトを利用することをお勧めします。
  • もしご自身で整形したければ、OpenSCADファイルをご利用ください。

斜めに印刷される表面(最も大きな面)は、結晶学の用語でミラー指数が(111)と表されます。半導体コンピュータチップのトランジスタはこの構造上に構築されます。

より少ない数の原子を用いてもっと小さいモデル作りたいければ、以下の小さな立方体をご利用ください。サイドバーに1ナノメートルのスケールが表示されています。

  • ほとんどの3-Dプリンティングソフトの場合STLファイルを利用できると思います。ご自身でサイズを調整しご利用ください。プリンターのセッティングの際はサポート材は使わずラフトを利用することをお勧めします。
  • もしご自身で整形したければ、OpenSCADファイルをご利用ください。

ちなみに、ダイヤモンドは純粋なシリコンの結晶と同じ構造を持っており、もちろんダイヤモンドはシリコンではなく、炭素の原子でできています。また、ダイヤモンドの方が、より高密度に原子が並べられています。

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