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「ノグチ・ルーム ワークショップ2014」――学生が旧ノグチ・ルームで過ごす体験の創出

「ノグチ・ルーム ワークショップ2014」――旧ノグチ・ルームで過ごす体験の創出
© Keio University

このステップでは、2015年にアート・センターで開催した「アート・アーカイヴ資料展Ⅻ ノグチ・ルーム再び」の関連ワークショップ「ノグチ・ルーム ワークショップ2014」をご紹介します。このワークショップは学生が自身の通うキャンパスの芸術資源である旧ノグチ・ルームに親しみ、その体験を記録することを目的に、全3回の授業時間を使って実施されました。学生がどのような作業を通して建築空間に向き合ったのか、ここでご紹介します。

「ノグチ・ルーム再び」展

この「ノグチ・ルーム再び」展は、ノグチ・ルームの成立時に焦点を当てた展覧会です。谷口吉郎はキャンパス全体に対する景観構想を練り、既存建築との関係を含めた建築相互の関係性を重視していました。そのため本展ではノグチ・ルームの図面や当初の姿がわかる写真資料に加えて、三田キャンパスに存在したすべての谷口吉郎建築の図面や写真資料も調査し展示しました。これはアート・センターが取り組んできた慶應義塾の建築プロジェクトの成果でもあります。そして本展を軸に、大学の授業内で学生に向けたワークショップを行いました。

ワークショップのコンセプト

現在、学生が旧ノグチ・ルームを訪れる機会は限られています。そこで、学生が自身の通うキャンパスの芸術資源である旧ノグチ・ルームを知り、その空間で過ごし、じっくり考える時間を設けたいと考えました。ワークショップではまずノグチ・ルームの成立背景についてのスライドレクチャーを行った後、旧ノグチ・ルームを訪れ、その第一印象や気づきを皆で共有しました。そして初めて旧ノグチ・ルームに入る学生が建築空間を意識的に捉えられるよう、下記のように作業テーマを決め、グループに分かれて取り組んでもらいました。

1.「あなたが椅子、机、暖炉、衝立と思うものを4つ選び、タイトル(名前)をつけてください」
2.「身体を使ってノグチ・ルームを体験する方法を提案する」
3.「室内(内)と庭園部分(外)が入るベストショットを撮影する」

1のグループが取り組んだのは、モノの持つイメージや役割を捉え、印象を言語化する作業です。椅子、机、暖炉、衝立「と思うもの」と問いかけることで、ただ名付けるだけでなく、それぞれのモノをよく見て、想像力を働かせ、モノの機能を新たに見出してもらうことも期待しました。

2のグループが取り組んだのは、「身体」と「空間」との関係を考える作業です。床や螺旋階段は当初のかたちで残っていますが、天井や2階部分、壁などは取り去られ、半透明の白い幕がつけられています。これら新旧の空間構成要素に意識を向け、身体を使うことで、空間をダイナミックな視点で捉えるきっかけとなることを期待しました。 

3のグループが取り組んだのは、旧ノグチ・ルームの内側と外側を意識して空間を切り取る作業です。谷口とノグチは、庭園や周囲の環境、内側と外側の連続性など、環境を総合的に意識してノグチ・ルームをデザインしました。かつての位置関係と光の入り方などは大きく変わっていますが、現存する旧ノグチ・ルームの姿を様々な角度から切り取ってくれることを期待しました。

発表と共有

上記の作業を通して考えたことやアイディアはワークシートに詳細に記録され、後日発表の時間にクラス全体で共有されました。あるグループは春に若い竹が真っ直ぐに伸びていくイメージから、ノグチの衝立を「春」と名付けました。またあるグループは多様な素材が用いられ曲線が多用された室内空間に注目し、1人がボールを床につきながら、1人が朗読しながら室内をくまなく歩き回り、音の響きと動きでその特徴を表現するなど、新鮮で豊かな視点がうまれました。学生の感想には、第一印象と作業後で空間への印象ががらりと変わったこと、他の学生の視点で眺め直すとまた違う空間に見えたことなどが多く語られていました。

このワークショップで、学生はタイトルをつけることで印象を言語化し、身体を動かし、写真におさめることで触覚的に、視覚的に建築空間を捉えました。これらの作業を通して、空間の至るところに散りばめられた谷口とノグチによる意匠と空間設計の工夫を確かに感じとっていました。当初のノグチ・ルームは失われてしまいましたが、学生や教職員がその背景を知り、残された芸術資源を大切にするこうした機会が、 建築や身の回りの文化財に意識を向ける重要なきっかけとなるのではないでしょうか。

展示1・2 ノグチ・ルーム再び展 展示風景(撮影:村松桂(株式会社カロワークス))

ワークショップ1 ワークショップ23 ワークショップ4 ノグチ・ルーム再び展 ワークショップ風景 ©️慶應義塾大学アート・センター

参考文献

  • 『アート・アーカイヴ資料展Ⅻ ノグチ・ルーム再び』(展覧会リーフレット)慶應義塾大学アート・センター、2015年3月2日
© Keio University
This article is from the free online

Invitation to Ex-Noguchi Room: Preservation and Utilization of Cultural Properties in Universities――旧ノグチ・ルームへの招待:大学における文化財の保存と活用

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