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紙の起源と伝来

紙の起源と伝来

いったい人類はいつから紙を製造していたのでしょうか?日本ではどうでしょうか?この週の最後の題材として、紙の歴史を学びましょう!

日本には、東京都北区王子に、日本における紙文化古今東西の紙の文化を紹介する「紙の博物館」があります。案内役である白戸さんといっしょに、紙の博物館を覗いてみましょう。

紙の歴史的起源

紙の歴史的起源を遡ってみましょう。

記録上は、ステップ1.9 でも紹介した中国の歴史書である『後漢書』に「紙」のことが書かれており、蔡倫 が和帝に献上した元興元年(105年)が、文献上最も古い「紙」の記録です(図1)。

Chinese book 図1 『後漢書』に記載された蔡倫と紙に関する記述
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ただ、同時期に成立した中国の部首別漢字字典『説文解字』に「紙」という漢字が記載されています(図2)。

book 図2 漢字で記された「紙」
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この事実は、蔡倫以前から「紙」が存在していた事実を示します。むしろ蔡倫は、均質な紙を安定的に作成する方法を開発し、そのために必要な材料と道具を確立した人物ということが出来ます。蔡倫が植物繊維を原料とすることに注目したことは、『後漢書』に記された内容からも明らかです。水素結合は、植物繊維だけではなく、例えば絹糸のような動物質の繊維間でも作用します。しかしながら、植物繊維間における結合力には劣ります。蔡倫が紙原料に植物繊維だけを使用したことは、紙を発明したことに匹敵するといえるでしょう。

中国における紙の普及

蔡倫の製紙技術確立と紙の普及に尽力したのは和帝の皇后・鄧綏(とうすい、81-121)です(図3)。 紙の歴史とその中の鄧綏の役割については、アレクサンダー・モンロー『紙と人との歴史』(pp.59 -61)に詳しく記述されています。

book 図3 『後漢書』に記載された和帝の皇后・鄧綏と紙に関する記述

日本における紙の起源

日本における紙に関する最も古い記録は、『日本書紀』の推古18年(西暦610年)高句麗(こうくり)の僧侶・曇徴(どんちょう)の渡来に関するものです。『日本書紀』によれば、曇徴は「碾磑(てんがい)」という、水力を利用する臼を日本で初めて作成しました(図4)。碾磑は麦やコメなどを脱穀する碾と、製粉する磑のことで、植物から繊維を取り出すためには欠かせない道具です。日本での紙の歴史は古く、漢字文化と共に大陸から伝わってきたと考えられていますので、曇徴の来日以前にも何らかの製紙技術があった可能性もありますが、曇徴以前の製法では、大陸からもたらされる紙の品質を上回ることは無かったと考えられます。曇徴がつくった碾磑は、日本の紙の品質向上に寄与したといって間違いありません。

book 図4 『日本書紀』に記された曇徴に関する記述
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関連するコースのご案内

本コースと同じ古書シリーズの「古書から読み解く日本の文化: 漢籍の受容(Sino-Japanese Interaction Through Rare Books)」では、紙や書物の視点から見た中国と日本の関係や歴史について詳しく解説しています。興味のある方はぜひ合わせて受講してみてください。

参考文献

  • Alexander Monro, The paper trail: an unexpected history of a revolutionary invention, 2014; ISBN-13: 978-0307271662)
This article is from the free online

古書から読み解く日本の文化: 和本を彩る和紙の世界

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