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装訂のヒエラルキー

装訂のヒエラルキー
© Keio University

巻子装は、装訂の中でも最も格式が高いと言われています。他の装訂はどうなのでしょうか?

最も格式の高い装訂「巻子装」

この殆どの装訂が巻子装に改められるという事実は、やはり巻子装が最も権威ある格の高い装訂であることを示していると言えます。改装は主に江戸時代の17世紀以降に行われていたと考えられますが、手間暇を掛けて価値の下がることをするとは考えられませんから、改装の方向性は、装訂の格差を示していると考えられるのです。

特殊なケース「折本」

巻子装と構造の近い折本に改められることが殆どないのは、やはり折本がやや特殊な装訂であったことを示していると言えるでしょう。

袋綴より格上の「綴葉装」

また、2.4で取り上げた、袋綴から綴葉装への改装を考えると、袋綴よりも綴葉装の方が格が高いことになります。使用する紙は綴葉装の方が高級ですから、当然のこととも言えますが、このことも今まではあまり注意されてきませんでした。

袋綴よりも綴葉装が格の高いことを示すもう一つの事例として注目できるのが、「嫁入り本(よめいりぼん)」です。江戸時代、皇族や公家あるいは大名など高級武士の家では、娘が嫁入りする際に他の道具類と一緒に、新しく豪華に仕立てた書物も持たせるのが習慣になっていました。江戸時代に既に古典になっていた有名な作品をセットにして作らせていたのです。婚礼の時に御披露目するのが目的でしたから、表紙も美麗なものにし、納める書物箪笥なども漆塗りの豪華なものにしたのです。

Genji monogatari 図1. 源氏物語 五十四巻 五十四帖 〔江戸初前期〕写
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江戸時代にはあまり利用されなかった「粘葉装」

17世紀と言えば、袋綴が広く普及していた時代ですが、この嫁入り本では圧倒的に綴葉装で作られたものが多いのです。それが意味することは明らかでしょう。

また粘葉装に改められたものが確認できないのも、江戸時代にこの装訂があまり用いられなかったことを教えてくれているのだと思います。

改装されていることを知ることの重要性

改装であることを知らずに、巻子装であるからと判断して、そこに保存されている本文を高く評価して研究を行ってしまうと、出発点が誤っているのですから、正しい結論にたどりつくことができないのは言うまでもありません。

和本を理解するためには、装訂を知ることが大切であり、同時に改装についても知っておく必要があるのです。 

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古書から読み解く日本の文化: 和本の世界

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