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絵入り版本の始発

絵入り版本の始発
絵入冊子写本の登場にやや遅れて現れたのが絵入版本です。日本における版本の歴史については一戸さんの説明に譲りますが、挿絵のある版本としては、14、5世紀に『融通念仏縁起(ゆうずうねんぶつえんぎ)』や『高野大師行状図絵(こうやだいしぎょうじょうずえ)』などの仏教的な巻子装本が刊行されていることが報告されています。これらはそれに続くものがないので、例外的な存在とすると、絵入り版本は17世紀の初めに登場し、商業出版の確立と共に急速に普及していったのです。

絵入版本の初例は慶長13年(1608)刊の所謂「嵯峨本伊勢物語」(図1)ということになります。この本は日本の平仮名書の古典作品の版本としても刊年が明確な最初のもので、極めて画期的な存在でした。豪商角倉素庵(すみのくらそあん、1571~1632)が、京都嵯峨の地で主として木製活字を用いて刊行した豪華な版本を総称して、「嵯峨本」と称しますが、この『伊勢物語』は嵯峨本の代表的な存在と言えるものです。

Saga-bon Ise monogatari 図1. 嵯峨本伊勢物語 円福寺蔵
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五色の色紙を用いた豪華なものですが、この様な絵入版本が作製されたのも、写本において絵入り冊子本が普及し始めていたことが可能にしたことであると考えられでしょう。

© Keio University
This article is from the free online

古書から読み解く日本の文化: 和本の世界

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